2012年 10月上旬
長く続いた残暑もついに音を上げ、連日ずっと30度を越えていた気温は9月20日ごろから急激に下がってきて、ようやく秋らしい天気になりました。
まさに、暑さ寒さも彼岸まで。
暑すぎて色づきの悪さが心配された中生種(9月~10月収穫の種類)のリンゴも、気温が下がったら一気に色づき始め、実りの秋の気配がプンプン漂ってきました。山の紅葉も残暑が厳しいと綺麗に色づかないと言いますが、同じ理屈なのでしょう。
10月中旬収穫のリンゴ(昂林)。美味しそうに色づいてきました!そんな秋の気配に果実たちも活き活きと輝き出した10月1日の未明、日本列島を縦断した大型の台風17号が東北地方を通過して行きました。
台風17号の進路予想図。ヤバイ!こっちに向かってる?!ラ・フランスやリンゴの収穫間近にそんな大型の台風に直撃されたら、たまったものではありません。
大きく育ってきた果実は強風に振り落とされ、枝に残ったものも枝擦れの傷がついて、もう売り物にはなりません。
10年くらい前、大型の台風が山形を直撃、風向きの関係か天童市周辺の果樹に大きな被害が出たことがありました。
その時、自分は普通のサラリーマンでしたので(今でもそうですが)、父と母がやっている農業の仕事はほとんど他人ごとに思っていました。
今も鮮明に思い出すのは、台風が過ぎた翌朝、出勤前の自分がいつものペースでのん気に朝飯を食っていると、早朝から園地を見回りに行ってた父が帰ってきて、無言で自分の席に座り、酒を飲み始めたのです。不審に思って、
「オヤジ、なに朝から酒飲んでんだ!?」と聞くと、父は
「・・・ラフも リンゴも みな 落っで売り物ならねは!」
(日本語訳「ラ・フランスもリンゴもみんな落とされて売り物にならなくなった」)
(農業一口メモ :地元農家は「ラ・フランス」のことを略して「ラフ」という)
と、ボソっと言い、黙って酒を飲み続けていました。
不鮮明な記憶ですが、その年はウチのラ・フランスとリンゴの7~8割方の損害を受け、毎年産直ギフトをお送りしているお客様に、お詫びとお断りの手紙を出したのでした。
真冬の厳寒の中での剪定作業から、春以降もずっと手塩にかけた果実を、一瞬ですべて叩き落され、園地一面にゴロゴロ転がっている有様を目にした父の気持ちは、どんなに悔しかったか。
あの時は「大きな損害を受けた」程度にしか理解できませんでしたが、今やっと少しわかってきた気がします。
・・・・・・
そして今回、台風17号は各地に甚大な被害をもたらしながら北上し、進路予想によれば山形を直撃しそうな動きだったので、毎日台風情報を見ながらヒヤヒヤ、9月30日の夜は心配でほとんど寝られずに過ごしました。
翌朝、いてもたってもいられず、日の出を待たず5時には園地へ見回りに出かけました。
結果は、わずかに進路が東方向(宮城県寄り)にズレたため、山形の果樹にはほとんど被害がなく、事なきを得ました。
・・・はぁ~~、助かった・・・。
その後、よ~く園地を見てみると台風による落果はありませんでしたが、強風と果実の重みに耐えられなかったラ・フランスの大枝が一本折れていました。
台風後の園地をよく見ると・・・なんか、枝が倒れてる?
あ~あ、大事な大枝、折れてた・・・。台風がこなくても、通常、果実が大きく育ってくるとその重みで枝がかなり下がってくるので、枝折れを防ぐために主な枝には支柱を立てて固定しています。
全ての枝に支柱を立てる訳にもいかないので、果実の着果量と枝の形状を見ながら支柱が必要かどうか判断しているのですが・・・。
・・・支柱が足りなかったということでしょう。
・・・失敗です。
形のいい枝で大玉の果実が生っていただけに残念ですが、台風の影響が枝折れ一本だけだったのは不幸中の幸いでした。
台風一過、今日は晴れそうだ!
無事だったラ・フランス。収穫間近です。自然の恵みを受けて作物を育て、生活の糧としている農業。
でも時には自然の猛威になすすべも無く、一年間の努力も苦労も報われないことも。
・・・所詮、人の力なんてちっぽけなもの。。
そんな自然の偉大さと大切さをあらためて考えてみたり・・・。
つづく