2013年 4月上旬
2ヶ月ぶりのアップです。
忙しかった、からではなく、ちょっと、・・・書けませんでした。
これまでも時々こぼしていましたが、いよいよ3シーズン目の春。
やればやるほど兼業の難しさを痛感し、本業への影響、家族の負担、その他もろもろのことがますます重くなり・・・。
誰のために、何のためにやっているのか?
自分の判断が間違っていないか、無駄なことをやっているんじゃないか?
いっそ農業諦めて普通のサラリーマンとして暮らした方が家族も幸せなんじゃないか?(← たぶん、まちがいなく)
そんな感覚に陥り、モチベーションも上がらず、消えない疲労感をひきずりながら、それでも、毎年繰り返し季節ごとにやらなきゃならない仕事に追われ・・・。
農業に対しては決して後ろ向きな感覚はなく、週末の度に無意識にハイテンションで立ち向かっているのに、心も体も史上最高レベルのダルさ。一体どうしたんだろう。。
・・・これって、5月病の典型的な症状?
考えれば、この2年間、平日も休日(会社の)も途切れることなく緊張感を保ち続け、正月などの僅かな休みを除く年間360日以上フル回転の日々でしたので、オンとオフの境を見失って、心のスイッチがぶっ壊れかけのレディオなのでは・・・?
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冒頭からネガティブキャンペーン(?)満載で、すんません。
一時は、そんな気の迷いからこのブログをそろそろ終わりにしようかとも思いましたが、
いいえ、やめません!
全くあてはありませんが、いつか、どこかにたどり着くまで農業も会社もブログも続ける! と、いうのが結論。
・・・また同じ葛藤を繰り返すのでしょうけど。
そんな訳で、ようやく開き直ったところで4月のネタ。
4月7日 剪定後の枝の切り口に殺菌剤「バッチレート」塗布。剪定が終わった4月上旬。
まだ雑草も生えてこない果樹園は、これから本格的な農業シーズンが始まる前の、ほんのつかの間の静寂。
100メートル決勝のスタートライン。
クラウチングスタートの姿勢で合図を静かに待つアスリートの気分です。
「いよいよ春本番。これから忙しくなっぞ~!」
という高揚感を感じながら、果樹が開花する4月下旬までの間、農繁期前の様々な準備や雑用(どれも大事な仕事です)をこなしました。
剪定で切り落とした枝を拾い集めて燃やしたり、剪定後の枝の切り口に殺菌剤(癒合剤)を塗ったり、自家用の野菜畑をトラクターで耕したり。
そして、「リンゴの高継ぎ更新」(品種の更新)。
これも、果樹の花芽が冬の休眠期から目覚めて動き出す前にしなくてはなりません。
※農業一口メモ 高継ぎ更新・・・品種が古く収益が上がらなくなってきたリンゴの生り枝を全て切り落とし、新品種の枝(穂木)をその切り口全部に継いで、全体を新しい品種のリンゴの木に変えてしまう、という技術。詳しくは→第36話参照
水戸農園のリンゴのメイン品種は「ふじ」ですが、以前作っていた品種で数本だけ残っていた「昂林」の若木2本に、最近注目の品種「秋陽」を高継ぎしてみました。
「秋陽」は県農業試験場により「千秋」と「陽光」の交配で誕生。
2006年、山形オリジナルの新品種として鳴り物入りでデビューした品種です。
『甘酸っぱい上に味が濃厚。パリパリした食感はふじ以上、色づきも良いエリート品種!』という触れ込みです。
今のところまだまだ知名度は全国区までいかず、市場ではやっぱり「ふじ」が一番人気のようですが。この先どうなるのか、そういう部分も楽しみではあります。
高継ぎの作業は、まず台木となる「昂林」の成り枝を全部切り詰めます。
4月13日 リンゴの高継ぎ更新。成り枝をバッサリ切られて、ちょっと木が可愛そうな感もあります。
でも、また新しい品種に生まれ変わり、美味しいリンゴを実らせてくれるはず。
穂木を枝一本ずつ高継ぎテープで繋ぎます。こんな風に、枝一本一本に新品種「秋陽」の穂木をテープで繋いでいきます。穂木に巻いてあるのは「メデール」という魔法のテープ。穂木を乾燥から守り、発芽するとテープが破れて芽が出てくるという優れもの。芽が出るからメデール。
・・・農業機械や資材は、どうもわかり安過ぎるネーミングになってしまうようです。
こんな感じで一本完成!資材のネーミングはさておき、母から聞きながらの素人仕事。
無事に全ての穂木が継げていればいいんですが・・・。
1ヶ月後には、穂木の先端に新芽が出てくるかどうかで結果が出ます。
そして、もっとも過酷だった作業は、堆肥撒き。(自分基準)
「堆肥」といってもいろいろ種類がありますが、今回施肥したのは「牛糞堆肥」です!
「牛糞堆肥」って・・・。
ええ。読んだ通り、当然「牛」の「糞」です。
「牛糞堆肥」は、ウチの田んぼで稲を刈ったあとの稲藁を提供している近所の酪農家さんが、藁をもらう代わりに、牛糞を発酵させた堆肥を毎年届けてくれます。
米農家が不要な稲藁を酪農家が乳牛の飼育に使用して、酪農家は牛の飼育で発生する糞尿で堆肥を作りそれを米農家が田んぼや畑の肥料として使用する。お互いの必要なものを提供し合うという、農家が昔から当たり前に行っていたことですが、これって、まさに循環型エコ農業ですね。
今年は、昨年の豊作による成り疲れがみえる(樹勢が弱っている)サクランボに施肥することにし、約1トンの「堆肥」をサクランボ園に届けてもらいました。
※突然ですが、「=CAUTION !!=」 ここから先は現物の画像が出てきます。
「牛糞」の画像で気分が悪くなったことのある方、食事中の方は視聴をご遠慮下さい。
いいですか?出ますよ?
出た!これが「牛糞堆肥」だ!堆肥は土作りには欠かせません。
特に「牛糞堆肥」には1グラムの中に数億個もの目に見えない有効微生物が存在していて、植物が吸収しやすいように有機物を分解してくれるのはもちろん、土の 団粒化を進め"ふっかふかの土"にしてくれます。(らしいです)
どうですか?このボリューム!この、どす黒い中に藁が混じった感じ。
なんか見てるだけでほのかに臭ってきそうです。
「牛糞堆肥」をフォークでネコ(一輪車)に積んで・・「堆肥」は、ある程度発酵されたものですが、まだ完熟ではなく半生くらいの状態で、塊の表面は黒いですが、フォークで崩せば中は黄色っぽい茶色というか・・・。
まあ、ウ○コ色です。
園地全体にまんべんなく運んで・・作業用ヤッケに長グツにゴム手という完全装備ですが、汗かいた顔と体であの臭いの中の作業ですから、目に見えないウ○コの成分が全身にこびり付いた感覚に襲われます。
フォークで細かく散らして・・春の緑のジュウタンに黒い塊が置かれていきます最初のうちはさすがに「牛糞」に対しての抵抗感があり、ブツがゴム手に付かないように、できるだけ長グツで踏まないようにという気持ちがあるんですが、けっこうな重労働ですから、やってるうちに段々と慣れて潔癖症的感覚もマヒしてきます。
堆肥撒き完了!畑のすみずみまでブツを散らして、ネコ(一輪車)いっぱいに堆肥を積んで歩き回るので、否が応でもブツを踏んで歩くことになります。
ブツに対しての抵抗感も潔癖症的な拒否反応も、そりゃあ最初だけは自覚がありますが、「農作業ならあたりまえ!」という職業意識が芽生えてきているのか、「えっ?牛糞?・・・別に。」というエリカ様のような淡々とした冷めた表情できっちり堆肥撒きをこなしている自分もいたりして。
振り返れば、幼少のころ。
自分も農家の息子であることを棚に上げ、家で牛を飼ってる酪農家の子供に「うわ~!お前ベコ臭ぇぞ!近寄るな~」とか「田舎の香水だ~!」とか、散々からかっていた思い出があります・・・。
結局、今自分がそれをかき混ぜたりしてる訳で・・・。
また、2年前は「鶏糞」くらいで「きたねー」だの「くせー」だのとビビッていた自分が、堆肥界の王様ともいえる「牛糞堆肥」をも軽く捌いているなんて。(鶏糞のくだりは→第12話参照)
・・・自分も成長したもんです。(か?)
つづく