今回はちょっと趣向を変えて、普段は山形R不動産スタッフとして活動している私・岩月が、農園に“助っ人”として参加した週末のレポートをお届けします。
水戸本人とはまた違った目線で綴る、さくらんぼ最盛期の一日。
2025年 6月
私は、山形R不動産の一員として、そして山形で暮らす者として、代表・水戸が営む果樹園へと向かった。
さくらんぼの収穫が最盛期を迎えた今、現場の空気に触れ、土地の営みを自分の身体で感じたい――そう思ったからだ。
現地までは車で50分ほど。夏至直後の空はすでに明るみ始めていた。
時刻は4:30頃。既に明るくなり始めた水戸農園へ続く農道にて。農園に到着すると、まだ日は完全に昇りきっていない時間。
すでに何人かが準備を進めていた。
いつもは仕事で顔を合わせる仲間たちも、この日ばかりは“さくらんぼ収穫の師匠”たち。
手慣れた様子で腰に収穫バッグを装着し、脚立を立てる姿に、気合いが伝わってくる。
ポータブルラジオから流れる演歌と、静かな風の音、鳥の声――
山形の初夏の朝らしい、静かで張りつめた空気の中で、一日が始まった。
代表の水戸より、さくらんぼ収穫についてレクチャーを受ける。色味と固さについて。色が良くても柔らかいと残念ながら廃棄となる。今年は気温が一気に上がった影響で、色づく前に熟してしまう実も多いという。
赤く、固く、艶のある実を一つずつ見極めながら手を伸ばす作業は、まるで宝石を探すような感覚だ。
途中から、好きな落語家の番組がラジオで始まった。
単純な収穫作業に、軽快な言葉が心地よく混ざってくる。
その頃には、だんだんと疲れが出てきていたけれど、目の前にはクエン酸たっぷりのさくらんぼ。
一粒頬張れば、目が覚めるような甘酸っぱさが口いっぱいに広がった。
いつもは本業でお世話になっているTさんもこの日はさくらんぼ収穫の師匠。2〜3時間ほど作業を続けた頃、「そろそろ朝飯にすっか」と声がかかる。
車で移動して向かった水戸家では、大広間に皆が集まり、炊きたての白米と味噌汁が迎えてくれた。
驚いたのは、そのご飯の美味しさ。
普段は朝を食べない私も、この日ばかりはおかわりをしてしまった。
聞けば、このお米も水戸農園で育てられたものだという。
水戸家の食卓にて仲間たちと囲む朝ごはん。水戸農園の米は最高に美味しかった。家の中では、パック詰めや仕分けを行う作業部隊がすでに慌ただしく動いていた。
この週末は観光のピーク。
農園直売所には開店前から数百人の行列ができ、品出しと同時に商品が売れていくという。
さくらんぼのブランド力、そしてそれを支える地元農家の底力を垣間見た。
熱中症対策のため、大事な休憩時間。これまた自家製の梅干しやら漬物が並び、塩分補給する。朝食の後は再び収穫へ戻り、昼過ぎにはネットの取り外し作業へ。
ピークを過ぎた園地から、少しずつ来季に向けた片付けが始まっていた。
この日の最高気温は34度。
ハウス内は風通しも悪く、まるで温室のような環境の中、汗が止まらない。
でも、目の前の作業に集中することで、余計なことは忘れられる。
34℃の気温の中、汗だくでこのネットを撤去する。来年のために綺麗に畳むのにコツがいる。ベテラン勢は高所にて手際よく金具を外していく。何より、スーパーに並ぶあの一粒が、どれだけの人の手と時間と汗によって運ばれているのか――
それを知っただけで、果物を見る目が変わる。
さくらんぼは高級品だと言われるけれど、その理由が少しだけわかった気がした。
土地とともに生きること。その苦労と尊さに、あらためて頭が下がる。
水戸農園のさくらんぼ。一粒一粒がまるで宝石のよう。
さくらんぼの季節が終わったあとも、水戸農園の一年はまだまだ続きます。
夏から秋にかけては稲刈り、そしてラ・フランス、りんごと、畑も果樹園も休む間もなく動き続けるとのこと。
どの作物も、ひとつひとつが手間と気配りの積み重ねで育まれていることを、今回ほんの少しだけですが体感することができた。
農作業は決して華やかではないけれど、朝の静けさの中に感じる充実感、収穫の瞬間にだけ味わえる喜び、そして何より、自然と向き合いながら土地とともに生きる姿に、深い尊敬の念を抱きました。
黙々と作業を終えたあと、煙草を一服する先輩方。 若輩者ながら、そんな姿にただただ頭が下がる思いです。 水戸農園の日々は、これからも静かに、力強く続いていきます。農園の「今」は、季節とともに常に移り変わっています。
また機会を見つけて、その風景をお伝えできればと思っています。
次は、稲穂が揺れる頃か、ラ・フランスの実がふくらむ頃か――。どうぞ、お楽しみに。