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2009.3.3

第5話 オーナーさんに会ってきた

 

偶然がいくつも重なった出来事、そして突然の電話から1週間後の水曜日、僕らはオーナーさんに会ってきた。

朝9時。大学で、持っていく資料をまとめて車で駅へ。始発の新幹線に飛び乗ってきた馬場さんを乗せた。まだ街が動き出したばかりの10時頃、七日町にあるその旅館の前で、僕らはオーナーさんを待っていた。ちょっと早く着きすぎたので、じろじろとこの建物を見て回っていた。

そこにやってきた一台の車。旅館の前に車を止めて、ゆっくりと車から降りてきたオーナーさん。僕らに会釈をし、こちらにやってきた。「なんだか誠実でやさしそうなおじいさん」そんな第一印象だった。

初対面同士、名刺交換。僕らがやろうとしていることの説明をすることから始まった。「ここを、ちょっと内装をきれいにして、旅館を復活させたいんですよ。」「実は東京では、古いビルをきれいにしてオフィスに使っているんですよ。」「ちょっと収支計算をしてみたら、結構利益が出るんですよ。」

という感じに、この建物が持っているポテンシャルの高さを説明してみた。黙って話を聞いていたオーナーさんは、なんとなく理解できたようだった。「んだか。んだらば中を見てみっか?(そっか。それなら中を見てみますか?)」そう言って、かばんの中から鍵を取り出した。

不動産会社からもらった図面上でしか見ていなかった旅館。未知の領域に足を踏み入れる感覚だった。僕らはまるで、どこでもドアを開けるのび太くん達のようだった。

玄関を入って、2階に上がった。北側にあるので暗いのかと思っていたら、結構明るい廊下だった。

採光も十分な、適度な広さの部屋がいくつもあった。

また、廊下の奥にはキッチンがあった。

図面で見たとおり、この旅館はいい物件だった。僕らは具体的にこの旅館を復活させる計画にするべく、資料用の写真をたくさん撮り、「ちょっと持ち帰って、具体的な案を考えてきます。」といってこの日は終わった。

僕がいろいろと写真を撮っている間に、馬場さんがオーナーさんと少し大人の話をしていた。その内容を聞くと、「昔オーナーさんは公務員で、今は年金暮らし。固定資産税を払っていくだけで精一杯らしい。」

聞けばこの旅館、昔はもっと大きな建物で、100年以上続く旅館だったそうだ。この旅館は代々、ご主人は外に稼ぎに行き、奥様は旅館の切り盛りをしていたそう。しかし、数年前に切り盛りしていた、今のご主人の奥様が亡くなられ、今は休業中だそうです。

昔からこの街にあり、歴史を作ってきた旅館が消えてしまう悲しさを感じながら、僕らは大学に帰った。

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このブログについて

山形R不動産草創期、2009年から2013年にかけて、当時の東北芸術工科大学の学生たちが山形市内の空き物件を探し、実際に再生していったプロジェクトダイアリー

著者紹介

黒田良太
鈴木芽久美
山本将史
工藤裕太
佐藤英人
石母田 諭

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